その“ひとつ”が、命をつなぐ──静かな備えが家族を守る日がくるから #column

それは、いつもの朝だったかもしれません。
いつも通りの通勤の準備、子どもを見送る笑顔、炊きたてのご飯の匂い。
けれど、その日常が、一瞬で崩れ去ることがあるとしたら──?

「備える」という言葉には、少し重たい響きがあります。
でも、あなたが今日ほんの少しの時間を使って考えたことが、
いざというとき、家族の命をつなぐ“差”になるかもしれません。

この記事では、防災の専門家が伝える「本当に必要な備え方」と、
暮らしのなかに無理なく溶け込む防災の工夫を、
静かな想いとともにお届けします。

この記事を読めばわかること

  • 自分たちの生活に本当に必要な防災グッズの選び方
  • 家族の年齢や状況に合わせた備えの工夫
  • 持ち出しやすく、家族で共有できる収納方法
  • 災害に強い住まいづくりの視点と実践アイデア
  • 備えを“習慣”にするためのやさしいヒント

たくさんより、確かに使えるものを

「とにかく全部入ってるセットを買っておけば安心」
そう思って準備したリュックが、実は“持ち出せない重さ”だったり、
開けてみると「これ、何に使うんだっけ?」と迷うようなアイテムばかりだったり。
そんな“備えたつもり”の声を、災害後の現場ではたくさん耳にします。

防災士が本当に必要だと語るのは、以下のようなアイテムです。

  • 飲料水と食べ慣れた非常食(3日分)
     → 知らない味は、心細いときにはストレスになることも。
  • 簡易トイレと衛生用品
     → 人目やにおいを気にせず過ごせることが、心の余裕をつくります。
  • モバイルバッテリーやラジオ
     → 情報が入ってくるだけで、不安の半分は和らぎます。
  • ヘッドライトや懐中電灯
     → 両手が空くだけで、子どもを抱く、荷物を持つ、移動する…すべてが違ってきます。
  • 現金(小銭)と身分証のコピー
     → 電子マネーが使えないとき、小さなお金が人とのつながりを生みます。

防災グッズは、量より質。
そして、それが「わたしたち家族のために選ばれたもの」であること。
そこに、大きな意味があるのです。

blue backpack

“わが家”にしかない備えがある

もし、家族に赤ちゃんがいたら。
もし、年を重ねた親と同居していたら。
もし、あなたが女性だったら、ペットと暮らしていたら。

それぞれの暮らしに、必要な備えは少しずつ違っています。

  • 高齢の家族がいるなら
     → 常用薬、予備の眼鏡、補聴器の電池。移動に使う杖やスリッパも一緒に。
  • 赤ちゃんがいるなら
     → ミルクや離乳食、使い慣れたおむつ、そして泣き止ませるお気に入りの絵本。
  • 女性なら
     → 生理用品や着替え、安心して身を隠せるポンチョや布。自分を守ることも、大切な備えです。
  • ペットが家族なら
     → キャリーバッグ、フード、トイレ用品。あなたがいない間の「心のよりどころ」も。

一度、紙とペンを持って「わが家にしかない日常」を書き出してみてください。
その一行一行が、“その日”を生き延びる支えになります。

取り出せなければ、備えていないのと同じ

「防災リュック?あるよ!クローゼットのいちばん奥にしまってある」

──その瞬間、想像してみてください。
深夜、家が揺れて、停電になって、泣き声が聞こえて。
そのクローゼット、開けられますか?
荷物、持ち出せますか?

防災グッズは、“目に見える場所”に置くことが命を守る第一歩です。

  • 玄関のすぐそば
     → 逃げるときに手が伸びやすい場所に。
  • リビングのソファ裏や棚の一角
     → 家族全員が目にする場所で、存在を忘れない工夫を。
  • 廊下や階段下のスペース
     → 家の中の動線に合わせて、誰でもすぐに使えるように。

そして、リュックは「一人にひとつ」
子どもには軽く、大人には少し重く。
年齢や体力に合わせて、持てる荷物を考えることも、やさしさのひとつです。

家そのものが、家族を守る場所になる

防災とは、モノを揃えることだけではありません。
“帰る場所”そのものに、備えを組み込むこともできるのです。

  • 地震に強い設計(耐震等級)にしておく
     → 壊れにくい家は、それだけで安心の土台になります。
  • 太陽光発電+蓄電池
     → 真っ暗な夜、ひとつでも電気がつくと、心が落ち着きます。
  • 雨水タンクの導入
     → 洗顔やトイレなど、生活水の確保につながります。
  • 飛散防止フィルムを窓ガラスに貼る
     → 怪我のリスクを減らし、避難中も安全に。
  • 家具の固定や配置を見直す
     → 倒れてこない、出入り口をふさがない。それだけで動ける幅が変わります。

「防災のためだけの家」ではなく、
「ふだんの暮らしを少し工夫することで、強くなる家」。
それなら、今日からでも始められそうな気がしませんか?

点検することは、“見つめ直すこと”

時間が経てば、状況も変わります。
子どもは成長し、季節は巡り、心のありようも変わっていく。

だから、防災の備えもまた「アップデート」していく必要があります。

  • 半年に一度の点検を習慣にする
     → 食品や電池の期限、衛生用品の状態をチェック。
  • 季節ごとの調整も忘れずに
     → 冬なら防寒グッズ、夏なら虫よけや熱中症対策。
  • 家族の成長や変化に合わせて中身を見直す
     → 子ども服、靴、好みや必要も変わります。

おすすめは、「記念日」に点検すること。
家族の誕生日、結婚記念日、引っ越しした日。
誰かを思い出す日に、命を守ることを考える──
それは、なんだか素敵な習慣になるはずです。

まとめ

災害は、いつやってくるかわかりません。
でも、備えは、いつでも始めることができます。

完璧じゃなくていい。
少しずつでいい。
だけど、あなたのその一歩が、
誰かの命をつなぐことになるかもしれない。

防災住宅や工夫を体感できる住宅展示場は、
“暮らしを守る設計”に触れられる貴重な場所です。今ある暮らしを、もっと安心できるものに。
あなたの“備える力”が、家族の未来を守りますように。